ライダーとガイド星 ☆ [気象]
ライダーとレーザーガイド星の共通点は、
地上から光を上空に向け発射し、戻って来る光に含まれる情報を利用し計測を行うことです。
2つの技術を簡単に紹介します。
❏ライダー(Light Detection and Ranging)
・レーダーは気象観測など広範に利用されていますが、電波の代わりに光をプローブパルスとして用いた観測機器がライダーです。気象分野では、エアロゾルの観測や高層風の状況を観測することができます。ドップラー・レーダーやウインドプロファイラーでは、降水粒子からの反射や大気の揺らぎによる散乱を利用するので、降水の有無や空気の湿り具合で観測距離が制限されますが、ライダーでは赤外光によるエアロゾルからの散乱光を検出するため、降水がない時でも観測が可能で、空港などに設置し、マイクロバーストを検知することなどへの応用が考えられてます。もちろん、風速・風向を検出しなくてはいけないので、ドップラーの機能が必要になります。光のドップラーシフトを検出するためには、コヒーレント検波(光ヘテロダイン検波)を行うので、局発光の周波数シフト手法、光源自体のスペクトルの狭線幅化、などの技術が必須で、さらに測定距離を稼ぐため光源の出力を大きくとらなくてはなりません。そのための、多段のファイバー増幅器や、エルビウムやイッテルビウムなどの希土類を含ませたガラスの増幅器が開発されています。その平均出力パワーは、数百Wから数kWにおよび、パルスエネルギーとしてはmJからJオーダーに達するとんでもなく強力なものです。
ファイバー増幅器を使うことで小型・低消費電力化が可能となり、航空機への搭載や、衛星への搭載も視野に開発がすすめられています。衛星に搭載することで、グローバルな上層風の状況を把握できるようになります。
話が難しくなってきたので、この辺にしておきますが、もっと詳しく知りたい方は、NICTやJAXAのHPに解説がありますので、参照してみて下さい。
写真は成田空港に設置されたLidar 気象庁のHPより
❏レーザーガイド星
・レーザーガイドスターの話を少ししたいと思います。
ニュートンやガリレオ、ケプラーにより発明された望遠鏡は、暗く遠い星を見ようという探求心から巨大化がすすめられてきました。分解能は望遠鏡の口径により決まるので分解能を高くするためには、口径を大きくする必要があるためです。しかし、口径を大きくすればするほど分解能が上がるかというと、そうではなく、地球大気による星像の揺らぎ(シンチレーション)があるため限界があります。ハワイやチリの標高の高い山に天文台が建設されているのは、少しでもこの影響を少なくするためです。
しかし、それでも大気の揺らぎが完全になくなるわけではありません。そこで使われているのが最新のAO(Adaptive Optics; 補償光学) 技術。大気の揺らぎにより、望遠鏡に到達する星からの波面が乱れるのをアクティブに補償するのがAOの原理です。具体的には、位相の面的なズレを検出し、液晶や鏡などを利用した位相制御素子で補償します。その時位相検出の光源として使うのが、ガイド星なのですが、視野内にガイド星として使える明るい星があれば良いのですが、ない場合には人工的に星を作ってガイド星として使うのです。これがレーザーガイド星。どうやって作るかというと、詳しくは論文等にゆずりますが、簡略には次の様です。地上80km~90km付近にあるナトリウム層に地上から589nm(D線)の波長のオレンジ色のレーザーを照射します。これによりナトリウム原子を励起し発光させ、人工の星とするのです。連続光(CW)ですが、25W位の強力な光源が必要です。この波長帯の光は直接発光させる手法がないので、赤外から非線形光学結晶を使って、和周波発生あるいは第2高調波発生によって波長変換をして発生させます。なお且つ、スペクトル線幅がpm(=10^-12)のオーダーでないと、効率よくNa原子を発光させることができないので、非常に難しい技術です。
詳しくは、国立天文台のHP、レーザーメーカーのTOPTICAのHPを参考にしてください。
写真は、チリにあるヨーロッパ南天天文台のVLTから出射されるレーザー光です。
NASAのHP, Astronomy Picture of the Day より。
地上から光を上空に向け発射し、戻って来る光に含まれる情報を利用し計測を行うことです。
2つの技術を簡単に紹介します。
❏ライダー(Light Detection and Ranging)
・レーダーは気象観測など広範に利用されていますが、電波の代わりに光をプローブパルスとして用いた観測機器がライダーです。気象分野では、エアロゾルの観測や高層風の状況を観測することができます。ドップラー・レーダーやウインドプロファイラーでは、降水粒子からの反射や大気の揺らぎによる散乱を利用するので、降水の有無や空気の湿り具合で観測距離が制限されますが、ライダーでは赤外光によるエアロゾルからの散乱光を検出するため、降水がない時でも観測が可能で、空港などに設置し、マイクロバーストを検知することなどへの応用が考えられてます。もちろん、風速・風向を検出しなくてはいけないので、ドップラーの機能が必要になります。光のドップラーシフトを検出するためには、コヒーレント検波(光ヘテロダイン検波)を行うので、局発光の周波数シフト手法、光源自体のスペクトルの狭線幅化、などの技術が必須で、さらに測定距離を稼ぐため光源の出力を大きくとらなくてはなりません。そのための、多段のファイバー増幅器や、エルビウムやイッテルビウムなどの希土類を含ませたガラスの増幅器が開発されています。その平均出力パワーは、数百Wから数kWにおよび、パルスエネルギーとしてはmJからJオーダーに達するとんでもなく強力なものです。
ファイバー増幅器を使うことで小型・低消費電力化が可能となり、航空機への搭載や、衛星への搭載も視野に開発がすすめられています。衛星に搭載することで、グローバルな上層風の状況を把握できるようになります。
話が難しくなってきたので、この辺にしておきますが、もっと詳しく知りたい方は、NICTやJAXAのHPに解説がありますので、参照してみて下さい。
写真は成田空港に設置されたLidar 気象庁のHPより
❏レーザーガイド星
・レーザーガイドスターの話を少ししたいと思います。
ニュートンやガリレオ、ケプラーにより発明された望遠鏡は、暗く遠い星を見ようという探求心から巨大化がすすめられてきました。分解能は望遠鏡の口径により決まるので分解能を高くするためには、口径を大きくする必要があるためです。しかし、口径を大きくすればするほど分解能が上がるかというと、そうではなく、地球大気による星像の揺らぎ(シンチレーション)があるため限界があります。ハワイやチリの標高の高い山に天文台が建設されているのは、少しでもこの影響を少なくするためです。
しかし、それでも大気の揺らぎが完全になくなるわけではありません。そこで使われているのが最新のAO(Adaptive Optics; 補償光学) 技術。大気の揺らぎにより、望遠鏡に到達する星からの波面が乱れるのをアクティブに補償するのがAOの原理です。具体的には、位相の面的なズレを検出し、液晶や鏡などを利用した位相制御素子で補償します。その時位相検出の光源として使うのが、ガイド星なのですが、視野内にガイド星として使える明るい星があれば良いのですが、ない場合には人工的に星を作ってガイド星として使うのです。これがレーザーガイド星。どうやって作るかというと、詳しくは論文等にゆずりますが、簡略には次の様です。地上80km~90km付近にあるナトリウム層に地上から589nm(D線)の波長のオレンジ色のレーザーを照射します。これによりナトリウム原子を励起し発光させ、人工の星とするのです。連続光(CW)ですが、25W位の強力な光源が必要です。この波長帯の光は直接発光させる手法がないので、赤外から非線形光学結晶を使って、和周波発生あるいは第2高調波発生によって波長変換をして発生させます。なお且つ、スペクトル線幅がpm(=10^-12)のオーダーでないと、効率よくNa原子を発光させることができないので、非常に難しい技術です。
詳しくは、国立天文台のHP、レーザーメーカーのTOPTICAのHPを参考にしてください。
写真は、チリにあるヨーロッパ南天天文台のVLTから出射されるレーザー光です。
NASAのHP, Astronomy Picture of the Day より。
2015-03-25 05:01
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